index / about / ARTIST / TIME TABLE / LOG / EXTRA / SPECIAL THANKS / MAIL
イン・ザ・フレーバー

今は夜です。当たり前ですけど外は暗い。それも都会の手心を加えたような暗さではなく、重たく湿った手を伸ばせば指先が黒く染まりそうな闇が窓の外に滔々と横たわっています。月や星の出た晩にはほんのりと浮かび上がる周りの木々もその闇にすっぽり包まれてしまって今夜は見えません。

部屋の隅でサンスベリアがぶっきらぼうにその硬い葉を地面に突き立てるようにして生い茂っています。 この「アナタはアナタで勝手になさってください。こちらも好きでやりますから」といった風の同居人を見ていると、なんだかふとありがたい気持ちになってきて戯れに「よしよし」と頭を撫でてあげたくなります。これ以上ないくらいシンプルで無愛想だけど、きっと彼がいなければこの部屋は今よりもずいぶんと寂しくなっていたんじゃないでしょうか。互いにリターンを求めないこのスタイルはとても健全なものに思え、大きな机と本棚とサンスベリアの鉢に囲まれて、ボクは今この文章を書いています。

今、ここには100近いテキストサイトの管理人さんが集まっていますが、それを意識するたびにボクはどこか不思議な気持ちに打たれます。 もし、大地震が起きたり、サイバーテロに巻き込まれたり、あるいは今ここに「おっきな足」が落ちてきたりしたら、この群れはどうなってしまうのでしょう。アリのように小さな人々の集まりでも、そのひとつひとつを拾い上げてみればそれぞれに違った風貌と感性を持った等身大の100個の人生が見えてきます。

ボクのサイトは去年の12月18日に開設して、この文章が公開される頃には1周年を迎えていると思いますが、その1年の中でもいろんな人に出逢い、流れ、かつて連れ合って騒いだ友人はほんの数人を残して跡形もなくなってしまいました。まるで卵のかたまりがあって孵化したものから飛び出していくようで、みんなどこに行ってしまったんだろう、とやや心細くもあります。

テキストサイトの中には5年6年と続いているインターネットの主みたいなものもあるでしょう。そこに集まる雲霞の如き人生の群れや、去く人来る人の真ん中で噛み締める酸っぱい哀しみを考えるとボクはいつもその巨大さにめまいを覚えるのです。
そんな古いサイトからしてみるとボクのサイトなど、あるいはそのサイトすら人の一生からすれば、人の一生は歴史の教科書や世界地図と見比べれば、それは九牛の一毛にも満たない「かそけき」ものなのかもしれません。

そんなボクたちのサイトにもしも意味があるとするなら、ここには今はもう嗅ぐことのできない「時代のフレーバー」みたいなものがあるかもしれない、ということでしょうか。このちっちゃなフレーバーは、いつかボクたちが負けそうになったとき、ぐっと込み上げる明日を頑張るための「魔法のフレーバー」になってくれるかもしれません。

雨に打たれ、風にふるえ、嫌になるような日々でも頭の片隅に残る「まんざらでもない」ときを掘り起こして、額に飾って眺めながら過ごしていけばいいんじゃないかな、それなりに楽しくやっていけるんじゃないかなと思います。

2006年がどんな年になるかは分かりませんが、いつか素晴らしく映える、いい匂いのする日々が皆さんに訪れることを願って。

Happy new yaer !

Copyright © 2005 中村. All Rights Reserved.
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送