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もういい加減にしてくれと僕は声を大にして言いたい。 除夜の鐘とは、去りゆく一年を振り返り、 来たる一年を迎える仏教の大切な行事なのですよ。 それなのに、 木魚と貯蓄貯金魚の区別もつかないような、 宗教心のないカップルが寺に集い、いちゃいちゃいちゃいちゃ。 まったく、ああいうカップルどもは仏教をなんだと思っているんですかね。 東京ディズニーランドのカウントダウンパーティーとはわけが違うのですよ。 それとも、「僕たち、煩悩なんです。ぜひ僕たちを鐘に見立てて、ついてください」 とか和尚に進言するつもりなんでしょうかね。 まあ、それなら大歓迎なんですが、 実際はそんな歩くサンドバッグのようなハードMカップルなんて滅多にいるはずなく、 世間のカップルの大多数はただ二人の時間を共有したいだけという甘ったれた理由で、 エサを求めて人里に下りてきたクマのごとく、寺に出没するわけなのですよ。 二人でいちゃいちゃしたいだけなら、新年なんてラブホテルで明けろ、アホ。 だいたいそうゆうカップルは先週クリスマスを祝っていて、 除夜の鐘が終わったら、今度は神社に初詣に行くつもりなんですよ。 おまえら、いったい何教ですか。 そんな浮ついた態度で寺に来るやつらには、ブッダに謝ってもらいたい。 まあ、宗教に関しては各人の自由なので、とやかく言うことはできませんけど、 とにかく寺でいちゃつくカップルはけしからんなと思うわけなのです。 「君たち、寺に来る暇があったら、 少しは社会の役に立つようなことをしたらどうだね」 と言ってやりたいくらいですよ。 鶏のエサになったほうがまだ世の中に貢献しています。 まあ、その言葉は実はカップルよりもむしろ僕自身が言われるべきことなんですが、 それは棚に上げといて、話を続けますね。 で、寺に出没するカップル対策として提案があるのですが、 今後そういったカップルが寺に出没した場合は、 彼氏を鐘にして彼女がそれをつくことにすれば、 とてもおもしろいと思うんですよ。 彼女が嫌がる彼氏に対して撞木を向ける。 ごめんなさいと泣きながら、愛する人に向けて勢いよくどかんと一発、撞木が炸裂。 寺に響き渡る鈍い音と呻き声。 そうすれば、絶対に寺にカップルなんて寄ってきません。 でも、案外彼女のほうが乗り気で、変なプレイに発展しちゃうと、 彼氏にとっては大変危険なので、 あまり強くは推奨できません。 「いつもはあなたにつかれてばかりだけど、 今夜は私がつくわよ、覚悟して!」みたいな感じで。 ……さて、よりによってこんな大舞台で、普段は決してやらない下ネタを、 ほとんど見切り発車的に披露してしまい、 すでに読者のみなさんから引かれた感じが否めませんので、 空気を一新させるために、 突発的に創作ネタをやってみます。どうぞ。

(T_T)はじまり

「ちょっと、あなた、いったいなんなのよ。
 私に隠れて、こそこそ主人と会ってることくらい、わかってるんだから」
「……」
「なにか言いなさいよ!
 証拠だってあるのよ!」
「……あの」
「結婚している男に手を出すなんて、いったいどういう根性しているのかしら」
「……あの」
「もう頭に来た。私、あなたのことは絶対に許さないから!」
「……あの、
 墓地の真ん中で、なにしてるんですか、和尚」
「お、チャーリーか、ちょうどいいところにきた」
「僕の名前はチャーリーじゃありませんよ。
 弟子の坊主に変なあだ名を付けるのはやめてください。
 和尚、もうすぐ読経の時間ですよ。本堂に戻ってください」
「どうでもいいじゃないか、そんな非生産的なことは。
 それより、ちょうど一人で『楽しい愛憎劇ごっこ』をしていたんだが、一緒にやるか」
「なに突然わけわかんないことを言ってるんですか。
 単語の組み合わせがおかしいですよ。
 第一、和尚が読経をサボって許されると思ってるんですか」
「まずは、27歳の専業主婦、美沙子が夫の不倫相手の菜都美に、
 ファミマでばったり会うシーンから始めよう」
「人の話は聞いてください。
 だいたいなんですか、その遊び。なにをしたらいいか全然わかりませんよ」
「チャーリーは美沙子の役をやってくれ」
「嫌ですよ」
「夫と離婚するように菜都美から詰め寄られたら、
 怯えながら、口からエクトプラズムを出せばいい」
「は?」
「そしたら、菜都美とエクトプラズムの超能力対決が始まる。
 エクトプラズムが菜都美を金縛りにすると、
 菜都美はそれを力ずくで解き放ち、口からレーザーをズババババ……」
「それ、愛憎劇じゃなくてSFですね」
「ホラーだよ」
「いいですよ、どっちでも。
 だいたい僕はエクトプラズムなんて出せませんから」
「なに言ってるんだ。
 この間、寝てるときに出してたじゃないか」
「なに、いきなり怖いことを言ってるんですか。
 やめてくださいよ」
「できるだけ白いやつを頼む」
「無理ですって」
「あ、白いと言えば、昨晩大変なことが起きた」
「いったいなんですか」
「寺の鐘が盗まれた」
「白い、関係ねー、……て、それ、本当ですか」
「ああ、これじゃあ、もうあの鐘でスモークサーモンが作れない」
「神聖な寺の鐘をなんだと思ってるんですか。
 墓地の真ん中でこんな頭の悪い話をしている場合じゃありませんよ。
 警察にはちゃんと届けたんですか」
「すぐに手紙を書いて、朝一で投函した」
「今すぐ電話で通報してください」
「別に警察を呼ばなくても、
 現場の指紋や足跡は私がすべて採取しておいたから大丈夫だろう」
「なんで勝手にそんな専門的な処置を施しちゃうんですか。
 それは警察のすることでしょう」
「現場には、Ψの形をした足跡が大量に残っていたよ」
「犯人は何者ですか、本気で」
「ともかくもうすぐ大晦日だというのに、鐘がないと困る。
 とりあえず住職専門誌『仏門ダイナマイツ』の12月号を参照して、
 これからどうすればいいか考えよう」
「なかなかマニアックな雑誌みたいですが、役に立つんでしょうか」
「鐘のカタログが載っている」
「かなりマニアックですね」
「ええっと、この記事でいいかな、『かっこいい即身仏になれる10のステップ』」
「きっと違います」
「じゃあ、『人気の卒塔婆で、オシャレに逝ける』かな」
「それも違います」
「『むかつく信者はこうして追い払え』」
「絶対違います」
「『まだ除夜に間に合う、今年の新作梵鐘完全攻略』、これだ」
「本当に大丈夫なんですか、その雑誌」
「今年の鐘はタコさんウインナー型が流行らしいぞ」
「鐘って、流行のあるものじゃないでしょう。
 正気になってください」
「なになに『高速回転式梵鐘』、これにしようかな」
「やめてください。あからさまに怪しいじゃないですか。
 だいたいなんですか、高速回転って。回っちゃだめですよ」
「ホイップクリームを泡立てることもできるらしいぞ。
 これなら、スモークサーモンに加えて、デザートも作れる」
「地獄に堕とされても知りませんからね」
「へえ、『防犯機能付き梵鐘』もあるよ、これなら安心できそうだ」
「まともそうなのも、あるじゃないですか。
 再犯防止は大切ですよ」
「ふむふむ、鐘の下帯からレーザーがズババババ……」
「やりすぎです」
「じゃあ、これはどうだ。
 デザインはノーマルだが、値段は破格だぞ」
「いくらですか」
「980円」
「破格にも限度がありますよ」
「『多目的梵鐘』ってのもある」
「つくためだけで十分ですから、多目的じゃなくていいです」
「いや、でも、機能はいっぱいあったほうがいいだろう」
「あればいいってもんでもないですよ」
「万が一のときは戦闘機になるらしい」
「なおさらだめです。
 なんですか、万が一のときって。そんなときないですよ」
「なになに『突然落下梵鐘、落ちルンです』」
「やめてください」
「じゃあ、『突然爆発梵鐘、吹き飛ブンです』」
「もっとだめですよ」
「『爆音』もあるよ」
「爆発とか爆音とかそういう類はだめですって」
「ならば、これはよさそう、『緑茶成分入り梵鐘』」
「無意味ですよ」
「ならば、『梵鐘も撞木もN極の磁力を帯びていて、
 つこうとすると、当たらなくてクネってなっちゃう』」
「長いし、わけわかりません」
「『梵鐘コンソメパンチ味』」
「却下」
「『姉歯……」
「いい加減にしてください、いったいいくつ出すつもりですか。
 そもそも本気で鐘を買い換える気があるんですか。
 ただでさえもここのお寺はお金がなくて困ってるんですよ」
「いや、お金に関しては大丈夫だ」
「なぜですか」
「この間、寺の鐘を売ってお金にしたんだよ」
「へえ、寺の鐘を売ってお金にしたんですか。
 それなら、お金の心配は無用ですね」
「……」
「……て、おい」

(T_T)おしまい

さて、こんなくだらない文章を読ませてしまって大変申し訳ないのですが、 みなさん、安心してください。 そろそろ別れの時間です。 だいたい僕はですね、パソコンなんかと向き合う前に、 可及的速やかに人生に向き合うべきなのですよ。 それなのに、こんな非生産的な言葉をまき散らして、 本当にいったいなに考えてるんだろうな。 まったく、大晦日の夜には、 108の煩悩よりもまず先に僕から、 鐘の音とともにこの世から消え去ればいいですよ、はいはい。 心からそう思う次第であります。

ゴーン。

鐘の音、そして僕の呻き声。 来年こそまともな年でありますように。



(滅)

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