姉歯と愉快な仲間達がマスコミの話題をかっさらい、ハードゲイが朝から晩まで腰をくねらせ、
サーヤと黒ちゃんがゴールインを決めた2005年、
僕が身につけたスキルは「三倉茉奈・佳奈の判別」でした。
街を一人で歩いている三倉姉妹の片割れを見つけて声をかけようとするも、自分が今まさに声をかけようとしているのは
一体茉奈と佳奈のどちらなのかしら?もし間違えて声をかけて機嫌を損ねてしまったらどうしようかしら?
と二の足を踏んでいる大阪のおばちゃんの耳元でそっと「茉奈だよ」と助言してあげる僕。
今まで誰もが為し得なかったその驚異の判定スピードと
クールでニヒルなナイスガイっぷりに世界は衝撃の念を禁じ得ない。
この快挙には全米も震撼。世界初のマナカナ判別師としてパーソンオブザイヤーに選出される僕。
TIME誌による「MANA・KANAの判定の基準とは?」とのインタビューに、
「詳しくは答えられないなぁ。でも、敢えていうなら茉奈の方が僕の好みかな?HAHAHA!」
とメリケンもびっくりのジョークを軽快に飛ばす僕。なかなか悪くないよね。
とまぁそんなことをこの前友人に熱く語っていたら露骨に嫌な顔をされました。そりゃそうだ。
しかしこう、なんと言いましょうか。非常にいたたまれない瞬間というものは割と誰にでも経験があると思うのですよ。
例えば心温まる一家団欒中、テレビを見ていたら突然あっはんうっふんと男女のカラミが始まった時だとか、
教師の悪口を大声で喋っていたら背後にその教師が般若のような表情で不動明王の如く
仁王立ちをしていた時だとか、Cドライブの中に父親が落としたであろうエロ動画ファイル(集団レイプ物)を
発見してしまった時だとかね。いやちょっと待て集団レイプて。いくらなんでもあんまりじゃないか。
まあ別に、姉歯が設計したのではないかという疑惑まで浮上してきたあまりに頼りない
我が家の大黒柱の性癖なんてのはこの際どうでもいいんですがね。いや、あんまよくないけど。
実は僕には一人、二歳年下の弟が居ます。しかし兄弟と言っても似て非なる物でありまして、
相違点を上げればキリがありません。敢えて言うならばモテか否かです。いや寧ろそれがすべてなんですが、
日曜日に僕がパソコンに向かって至福の時を過ごしている時、こいつは平然と
彼女を我が家に連れ込んであははうふふと談笑をばっちこいとキメてたりするわけです。
いやあのもうこれ以上は書かせないでくださいごめんなさい僕が悪かったです許して。
いやいやいやちょっと待て。
仮にも僕はこいつの兄貴だと言うのに、
一体何故これほどまでににビクビクすることがありましょうか。
このままでは家庭内における僕の地位が危ない。
父親の威厳はとうの昔に地の底まで落ちてるし、
こんな脳みそプルプル言ってるような頭のゆるーい奴に家庭内ナンバー2の座を奪われたらこの家は
終わってしまう!(ちなみにナンバー1の座には母親が鎮座。)
ここは一つ兄貴の威厳を保つためにも、弟には一言ガツンと言ってやらねばなるまい。
しかし、頭ごなしにガツンと言うのも考え物です。ただギャーギャーと騒いでるだけでは
紳士もへったくれもありませんから、ここは一つオトナな兄貴として太平洋級の懐の深さを
こいつに見せつけてやりましょう。そうと決まれば話は早い。
「まぁ、なんだかんだ言ってるけど俺たちは血を分けた兄弟だしな。
そう言えば、兄ちゃん最近お前と会話してなかったよな?
ごめんな・・・俺たち兄弟なのに・・・。笑っちゃうだろ?
そんでさ、いきなりこんな事言うのもおかしな話だけど、たまには腹割って兄ちゃんと話をしてみないか・・・?」
微笑み合う兄弟。そうだ、言葉なんて初めから要らなかった。
弟のちょっとはにかんだような笑顔を見て僕は安心したんだ。
大丈夫、俺たちは一生縁の切れることのない兄弟だ。こいつは一生、俺の可愛い弟だ。
少しばかりの沈黙。でも不思議と気まずい感じはしなかった。
そしてその沈黙を破るかのように、弟が僕の方を見てゆっくりと口を開いたんだ。
「・・・兄ちゃんって童貞?」
こうして、今年一番の心をえぐる一言と、まるで
可哀想な生き物でも見るかのような弟の視線を全身に浴びながら、僕はめでたく負け犬オブザイヤーの称号を手にしたのです。
しかしこのままではあまりにいたたまれない。そう思ってふとこの状況を三倉姉妹に置き換えて考えてみたのですが、
何とも言えない気分になった上に途中でどっちがどっちだかわからなくなったので来年こそは頑張ろうと思います。(マナカナ判別師として)
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