ついに終わった。一年間の僕の苦労がついに終わった。もうこれ以上苦しまずに 済む。 もうこれ以上ひどい目にあわなくて済む。湧き上がる幸福感と開放感で僕は胸が一杯 に なってしまう。・・・や、やったよ、僕、僕。やったんだよ！(絶叫

まぁ、なんの話か分からない方も多数いらっしゃると思うので、というか、突然 こんな話を 僕の意図することを理解してくださる方がいるはずも無いと思うので、順を追って１ から説明させていただきますと、 化学の授業が終了したんですよ。「なんだそんなこと。」等と皆さんお考えになると 思いますが、 これは僕にとって物凄く大きな意味を持った事でして、こんなに嬉しい事は僕史上類 をみません。 そもそも、今思えばこの悪夢の始まりは一年生の時の化学の授業 だったに違いない。すでにあんなところで伏線が貼られていたとは思ってもみなかっ た。

僕の通う学校では一年生のうちに化学を全員必修で習うのですが、どうあがいて みても 一年生のうちにあの教科書を１冊終えるのは不可能なんですよ。それで、受験に必要 な 生徒は三年生になってから各自で選択して授業を受ける事になるのです。僕も受験で 化学が必要な生徒のうちの一人でして、選択せなあかんな、と思っていたのですが、 ここで予期せぬ自体。理系である僕は当然の事ながら化学と平行して物理やら数学や らの 授業も選択せねばならないのですが、ものの見事に他の授業とかぶってるんですよ ね。 ｏｈー！ジョン！これは一体どういう事だい？とまぁ、担当教師に攻め寄った所、 なんとかまぁ、講師の先生を召喚して授業を受けれるようにしてあげるよというお言 葉を 頂いたのです。ちなみに担当教師の名前は本当にジョンです。嘘です。

だけどもこれがまずかった。化学は独学でやればよかったという後悔の念で今僕 の胸ははりさけそう。 三年生になって迎えた最初の化学の授業。どんな講師の先生がくるんだろうか。若く て綺麗な メガネと試験管の似合う女教師だったらいいな。とかまぁ、僕は果てしない妄想を繰 り広げ 高鳴る鼓動を抑えられないのですが、扉を開けた向こうにいたのは、なんといいます か。 なんといいますか。あのですね、ダイオキシンを食べたあとの顔とでも申しましょう か。 僕の友達は「放射能を浴びたんだよきっと」と言い切りました。そして、顔だけなら まだしも、 この授業内容がまたひどい。ひどい。この三文字でしか形容できないくらいひどい。

元々６人くらいしか受講者がいなかった講座なんですが、回を重ねるごとに人は 減り続け、 気付けば僕対クリーチャーというタイマン授業へと成り果てていたのでした。ここで 僕も 脱出すればよかったのですが、「召喚したのは自分」という鎖につながれてしまい、 辞めるに辞められず、雨の日も、風の日も、嵐の日も、僕は学校へと向かったのでし た。 この苦しみ。いつか絶対に報われる。そう信じて疑わなかった。どんなひどい授業で も、 きっと力にはなってくれるはず。負けない。絶対に僕は負けない。

そして季節は移り変わりまして、今。ついに召喚獣と決別できる日がやってきま した。 僕は朝から大興奮。待ちに待ったこの日がついにやってきた。やっとこの悪夢から解 放されるんだ！ 生きてて良かった。僕はこの日ほど自分が生きてる事に感謝した事はありませんでし た。 ２時間ぶっ続けの授業はどんどん佳境に差し掛かり、思わず僕はにやけてしまう。 にやけて仕方ない。授業の終了五分前くらいからにやけを止めるので必死だった。絶 対に 召喚獣は「この生徒キモチワルイな」と思ってたに違いない。でもそれは間違って る。 気持ち悪いのはあなたですから！残念！(死語

そして鳴り響くチャイム。召喚獣は何か言ってた気はしますが、そんなの知りま せん。チャイムが なったんです。僕の任務は終わったんです。悪夢は終わったんです。ついに新しい陽 射しの下へ 僕は歩みを進める事ができるのです。ち、違うよ。ないてなんかいないよ。目から涙 がでたんだよ。

まぁ、１から順を追って話しましたが、これで理解していただけたでしょうか、 この僕の苦痛の日々を。 今はもう活気に満ち溢れた生活を送っています。これほどまでに一週間を楽しく過ご せる事があったでしょうか。 毎週毎週、今週またあの召喚獣に会うのか・・・という苦悩を抱えてた、あの頃の自 分が まるで嘘みたいです。今なら言える。胸張って言える。

あたし、生きてる(実は翌週まだ授業があったという事実に脅えながら。

【追伸。】
あんな召喚獣はもう二度とごめんだ