800MHz

職場で虫のような扱いを受け続ける毎日。陰湿な虐めは言葉での罵声に始まり、最近はそれが暴力に変わった。今日も昼休みに、同僚から硝子製の灰皿で後頭部を何度も強く殴打された。普通であれば死んでいてもおかしくないが、この世界はそういう仕組みなのだろうと思う。死ぬ程の苦痛を受けても死ぬことが無い世界。ここは地獄じゃないのか?ならば地獄から出て行けばいいと人は言うだろうが、俺はここに留まる必要があると昨日までは思っていた。

キャバ嬢とセックスしたい欲望のみで二十年勤めていたが、同僚に暴行を受けた際に壊れた眼鏡を新調したときにわかった。キャバクラだと思って働いていた職場は産業廃棄物処理場だった。なるほど、金髪にピアスや派手なスーツが受け入れられないはずだ。同僚も糞が人格を持ったような蛆虫だしな。俺は目的を達するための手段を間違えていた。この世界にはキャバ嬢はいない。理解し終えると、即座に絶望で体中から血を噴き出して死んだ。

キャバ嬢とセックスしたいと二十年も念じ続けたからなのか、転生後に歌舞伎町のクラブのハイヒールになった俺。セックスは出来ないが意外と幸せだ。願わくば次の転生の際には、嗅覚を与えずにお願いしたい。

 

 

2.4GHz

通勤時に毎日通る道があり、その道の脇にある暗闇が気になって仕方がない。薄汚い雑居ビルが挟んだビルの隙間。立ち入ろうと思えば可能だが、通勤時の人通りは多いためにためらう。ビル間の隙間など何処にでも存在するが、あそこは違う、気がする。何というか他の場所は暗いだけなのだが、その場所は完全な闇だ。ビルの配置を考えても日が差し込むはずなのに。そして時折唸り声のような音が聞こえる。ああ、気になって仕方がない。奥に入ってみたい。

土曜日の朝、通勤する人間も少ないこの時に調べるべきだ。思いつくと準備を始める。懐中電灯を歌舞伎町のドンキホーテで万引き、吉野家で豚丼を食い逃げ、新鮮組の店員を撲殺、毒蜘蛛三万匹を地下のサブナードに放つ、コマ劇場前で女性器の名称を絶叫。用意周到に暗闇に入る準備をする。ビルの隙間の前に立つと、動悸が異常に速くなる心臓。期待に胸が高まる感覚など、ここ数年であっただろうか。あの場所あの場所あの場所……あの場所。

暗く湿度が高い。もう冬だというのにシャツが体に張り付き、群青色の体液が額から流れ落ちる。しばらく経ち、闇に目が慣れてきて最初に見えたのは壁に開いた大きな穴。凝視していると、穴から巨大な褐色の看護婦が這い出てくる。あれは?なんだ?動悸が更に加速する。恐怖?歓喜?激しい眩暈に朦朧とする意識で、今にも心臓が張り裂けそうだ。

張り裂けて死んだ。何もしない看護婦と死体。

 

 

5.2GHz

除夜のテキスト祭を見ているみんなー!呼吸してるー?最後は歳末にインターネット見てる気持ち悪いみんなが大好きな下ネタ全開でおくるよー!だからブラウザを凝視して視力が著しく落ちて眼球が転がり落ちて化膿して腐乱して死ね。嘘ですよー!堪忍やー堪忍やでー!お詫びの印に女性器の名称とか叫んじゃうから!右翼の街宣車の車窓から行くよー!

「オマ……!!」

と、叫ぼうとした瞬間に僕は知らない景色の中にいた。古びたアパートの廊下のようだが、床は赤い赤い血液のように赤い液体で足元が浸かっている。血の臭いに咽ながら周りを見るが窓は無く、暗くてよく見えないが一番奥に扉がある。女のすすり泣くような声と、男の絶叫する声が階下から聞こえた瞬間に鼓膜が破裂し何も聞こえなくなった。

耳の痛みに耐えながら奥まで歩き、扉を開けると階段があり、そこを降りると女がいた。女は及川奈央によく似て美しいが、どこと無く淫靡な印象を受けた。顔中にいやらしい文字列がびっしりと書いてあったからだ。女を見ていると、その後ろから歩いてくる男。顔色は悪く、服装は乱れ、異臭を放っているが僕だ。僕自身だ。ドッペルゲンガーか?呆然としているともう一人の僕が、女に向かって執拗に「クリ派?中派?」と話しかけている。その表情は卑しく下劣。僕が目を背けると男が声を出した。

「オマエの叫びたいことを代弁してやろう。この世界にエネルギーを供給する全ての人間に伝えてやる。」女を鈍器で滅多打ちにしながら、微笑んだ男。その直後に、僕とよく似た笑顔を浮かべがら失禁し、世界の全ての民に向け女性器の名称を叫んだ。二度、三度と繰り返し繰り返し。

全員ぶっちゃけドン引き。

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送