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百八つの煩悩を鐘を撞いて払い、平和な気持ちで新年を迎える。そんな除夜の鐘にちなんだ除夜のテキスト祭ですからここは一つ私の煩悩にまみれた過去を懺悔し鐘撞きのひとつとしたいと思います。
かつて私は自分で自分に『ナイスガイ』というあだ名を付けたことがあります。由来はもちろん私がナイスガイであるからに他ならないのですが少々物足りなく感じていることがありました。ナイスガイとあだ名されるぐらいナイスガイであるならば当然みなにちやほやされるべきであって、そうであるならば当然ファンクラブが存在すべきなのではないか。思い立った私はすぐさま自らファンクラブを立ち上げクラスメイトを勧誘に乗り出しました。中には照れからか入会を渋る人もいましたが酔った時などに言質をとり二十数名の会員を獲得しました。
せっかくのファンクラブも立ち上げただけでは意味がありませんから特典のようなものを考えました。やはりファンとの生の交流が大事だと考えた私はクラスの飲み会などを強引に『ナイスガイを囲む会』と称することによって交流を図りました。またファンクラブといえば普通、会報のようなものがあるなと考えた私は『My Niceguy』という会報を発行することにしました。年数回発行する予定だったのですが面倒臭かったのでそのまま放っておいたところ、物好きな会員が「会報まだぁ?」とか言ってくるので一念発起し、ちょうど年末だったので年賀状替わりに『My Niceguy』を出すことにしました。
『My Niceguy』の内容はナイスガイの近況報告、ナイスガイの部屋の間取り図公開、ファンの投稿からなる読者のページ、などからなっており、その他別冊として『ナイスガイ秘密69』という小冊子を付録に付けた豪華なものでした。当時パソコンなどは普及しておらず手書き原稿をコピーし貼り合せるという作業は意外に途方もない作業で二度と作ることはないだろうなと思いましたがそこはファンのため、寝る間も惜しみ作業に没頭した結果(元旦に間に合わすとかそういうことに関しては結構律儀)立派な会報が出来上がりました。
コピーは両面コピーですらなかったため全8ページの『My Niceguy』は意外に重く80円で届く範囲の重さではありませんでした。しかしそのことには薄々気付きつつ目を瞑り80円切手を貼って投函しました。それまでの経験上、多少の足りない額は届け先で徴収してくれることを知っていたのです。しかしそれは甘かった。年賀状を配る忙しい時期にわざわざ徴収してくれるほどの親切心を郵便局は持ち合わせていませんでした。アイドル、ナイスガイの会報なのですから特別扱いしてくれてもいいのにとは思いましたがまだ人気は全国区でないのだからと自分を納得させました。
自宅に送り返されると元旦に間に合わなくなるので郵便局に呼び出され手渡されたのはスーパーの籠みたいのにどさっと入れられた二重数冊の会報。宛先にご丁寧に会員番号が書きこまれてあるその封筒群を郵便局員はどう見たのでしょう。顔を真っ赤にしながら10円切手を貼り付けるナイスガイ。この屈辱もファンのためと耐えました。
多くの苦労はありましたが労作だけあってその出来には自信がありました。そうは言ってもファンの反応はやはり気になる。年が明けファンたちと顔を合わせるたびに感想を聞きました。その中から忘れることの出来ない回答を二つ。

「読者のページが一番面白かった。」
「ごめん、読んでない。」

『My Niceguy』が発行されることはやはり二度とありませんでした。

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